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カタールの首都・ドーハで滞在した9日間は、
この国の風土や人々を知るには十分な期間でした。

主たる目的である、UCIロード世界選手権取材では、
毎夜、原稿を書き上げ、記事ページ編集を終えるたび
「今日もよい仕事ができた」と心が満たされ、
それが翌日への活力となりました。

現地ではレンタカーを借りて、ホテルから会場までの往復を繰り返していましたが
コーニッシュ(海岸通り)での早朝ラッシュも、
車窓から見るペルシャ湾も、
昼夜が変われば雰囲気が一変する街の様子も、
わが心に馴染むのに、そう時間はかかりませんでした。

最終日の取材後、次の国への移動が控えていたのですが
想定より取材時間が押してしまい、
バタバタと焦りながらカタールを後にしたことだけが
いささか心残りであります。

それ以外はスムーズに、
まぁ細々としたトラブルや問題はありましたが、
さしてストレスにはならず日々を送ることができました。

 

男子エリートロードレースでのペテル・サガンの2連覇

それはもう、取材者としての範疇を越え、
一サイクルファンとして鮮烈なインパクトを植えつけられるものでした。

あの瞬間を現地で直接見られたこと、
数十メートル先で起こった決定的瞬間に
立ち会えたのはこの上ない幸せ。

「サガンだ~! やっぱスゲェよ!」と叫びながら
選手インタビューを行うミックスゾーンまでの約200mに及んだ全力疾走は、
マイキャリアの1ページに明快なほど、ビビッドに描かれたのでした。

 

最も有名な『スーク・ワキーフ』

最も有名な『スーク・ワキーフ』

この国へと渡る前に押さえていたいくつかの情報、
例えば「観光地としては少々つまらない」「ドーハは世界一退屈な街」などいった
ネガティブな見方は、現地へ趣くことで
案外簡単に払拭できるものです。

「自分で楽しみを見つけよう」くらいの気概で
仕事の合間に街へと繰り出したのがきっとよかったのだと、
帰国して時間が経つ今となっての実感。

この街の象徴とも言える
オイルマネーの恩恵が生む高層ビル群の中で過ごしていれば、
捉え方は違ったのかもしれません。

私が滞在したのは、
「スーク」と呼ばれる市場から近い旧市街。

この「スーク」で、多くの楽しみが得られたのでした。

 

ビリヤニ

ビリヤニ

特に心惹かれたのは、食事。

国内外問わず、基本的に現地のものを食するようにしているのですが、
ドーハのローカルフードはどれも美味しくいただきました。

なかでも、「ビリヤニ」といわれる
インドから伝播されたという、スパイスと米がベースの料理は
いくら食べても飽きないほど、嗜好にマッチしたものでした。

バスマティと呼ばれる米は細長く、
炒めるとパラパラとした食感。

豚肉を食さないイスラム圏の国々では、
主な具材として鶏肉かラムが使われます。

上の写真で見ると、山となったご飯の中に
スパイスの効いた骨付きチキンが埋まっているような具合。

毎晩違う店を漁っては、
いろいろ開拓してみようと試みていたのですが、
ある1軒が遅い時間まで営業していることを知り
仕事が押したときなどは何度もそこへ足を運んでは
ビリヤニをオーダーしたのでした。

最初は私を怪訝そうに見ていた店員たちも
やがて「iPhone 7 Plusを持つ日本人」として存在を認識し、
いつしか友人として扱ってくれるようになりました。

 

帰国後、この国の物価についてよく聞かれるのですが、
食事、物ともに日本より少し安いかな・・・というのが
滞在してみての印象です。

すべてを把握しているわけではないので、
正しい見方か定かではありませんが、
旧市街での生活では、思いのほか節約できました。

ちなみに、前述のビリヤニでおおよそ15カタール・リヤル(現地通貨)なので
日本円にすると400円少々といったところ。

9日間も滞在していると、
日本から持っていった「トラベルセット」的な日用品は底をつき
近くのマーケットで補充するわけですが、
それらもある程度安く手に入れることができました。

 

左上のモニターに注目。32リッター入れて40カタール・リヤル(約1,130円)

左上のモニターに注目。32リッター入れて40カタール・リヤル(約1,130円)

そして、何よりも衝撃的だったのがクルマ。

レンタカーは車両グレードにこだわらなければ
1日あたり2,000円台で借りられますし、
ガソリン代が圧倒的に安い。

その価格、リッター35円!

お国柄というのもありますが、
それにしたって安い。

ガソリンスタンドには決まってATMがあって、
万が一持ち合わせが少なくても
そこで現金を引き出して支払えばよいという便利さもなかなかのもの。

 

こうしてドーハでの日々を振り返ってみましたが、
仕事を通じての新たな出会いや、
地元の人々の優しさが支えになったことに尽きます。

どうしてもお金にまつわる部分が気にはなってしまうけれど、
一方で“プライスレス”な部分もたくさんあって、
それらを見過ごしていては、この仕事は務まりません。

 

他者をリスペクトすること
他者にリスペクトされること
土地に馴染むこと
日常に流されないこと

 

上手くは説明できないけれど、
そのあたりは感性で。

 

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ドーハ。

再び足を運ぶ日が来るでしょうか。

この仕事をしていれば、
近いうちにきっと行くことができると思っています。

 

それでは。

The Syunsuke FUKUMITSU
福光 俊介

 

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